個人で塾を経営されている皆様、日々の教室運営、本当にお疲れ様です。たった一人で、あるいは少数のスタッフと、生徒の未来を背負い、保護者の期待に応え、そして経営の舵取りまで行う。そのご苦労と孤独は、察するに余りあります。
「大手の塾は資金力も知名度もあって羨ましい…」
「うちのような小さな塾では、できることに限界がある…」
もしかしたら、心のどこかでそんな風に感じてしまう瞬間があるかもしれません。しかし、もしそう思われているとしたら、それは大きな間違いです。断言します。個人塾には、大手塾が喉から手が出るほど欲しがる、そして決して真似のできない「最強の武器」が、すでに備わっているのです。
今回は、私自身が大手塾の教室長として身をもって体験した「現実」と、そこから見えてきた個人塾の計り知れない可能性について、熱を込めてお話ししたいと思います。
第1章:大手塾の教室長が本当に費やしている時間 ~生徒指導以外の「見えざるコスト」~
私が大手塾で教室長をしていた頃、一日の大半を何に費やしていたか、想像がつくでしょうか。生徒の指導計画? 成績分析? いえ、違います。最も多くの時間と集中力を奪われていたのは、生徒の成績向上とは直接関係のない、膨大な「余計な業務」でした。
その最たる例が、「電話対応」です。外線だけでも日に20回以上、エリア内の他教室や本部からの内線も合わせれば、日に30回、多い日にはそれ以上、私は電話の受話器をとっていました。
電話というのは非常に厄介なもので、かけた方が100%優位な立場にあります。鳴り響くコールを無視するわけにはいきません。集中して授業準備をしている時も、複雑な成績資料を作成している時も、その思考は電話の呼び出し音一つで無慈悲に中断されます。そして、電話一本で新たなタスクが生まれ、ToDoリストは増える一方。精神的にも肉体的にも、じわじわと疲弊していくのです。
しかし、悲しいかな、大手塾の「余計な業務」は電話対応だけではありません。
生徒と講師の組み合わせを考えるシフトの作成。これが一番やっかいです…。
定期的に開催されるエリア会議。
チェーン全体の集客キャンペーンの準備と、そのための煩雑な手続き。
アルバイト講師の採用・労務管理に関する本部とのやり取り。
これらの業務の一つひとつが、教室長の貴重な時間を奪っていきます。もちろん、組織として動く以上、必要な業務であることは否定できません。しかし、その時間の多くが、目の前の「生徒の成績を上げる」という塾の本質的な活動から、かけ離れた場所で消費されているというのも、また紛れもない事実なのです。
第2章:個人塾の「時間」は、すべて生徒のために使える黄金の資産である
大手塾の教室長が、上記のような業務に忙殺されている、まさに「その瞬間」、あなたは何をしていますか?
大手塾の教室長が、エリア会議で長時間席についている、その間に…
あなたは、一人の生徒の答案用紙を隅から隅まで分析し、その子がどこでつまずき、どうすれば乗り越えられるかを徹底的に考えることができます。
大手塾の教室長が、本部への報告書を作成するためにパソコンと睨めっこしている、その間に…
あなたは、最近少し元気のない生徒にそっと声をかけ、じっくりと話を聞いてあげることができます。あるいは、先日頑張った生徒の保護者の方に、その成長ぶりを伝える短い手紙を書くことだってできるでしょう。
大手塾の教室長が、ひっきりなしにかかってくる電話対応に追われている、その間に…
あなたは、明日の授業で生徒たちが「あっ!」と驚くような、面白い導入の仕方を考えたり、より分かりやすい解説のための準備を完璧に整えたりすることができます。
これこそが、個人塾の持つ最強の武器、「時間の使い方」における圧倒的な優位性です。あなたには、意思決定の遅い大きな組織の都合に振り回されることなく、良いと思った施策を即日実行できる「スピード感」があります。生徒一人ひとりの個性を深く理解し、その子に合わせた柔軟な指導ができる「裁量権」があります。そして何より、あなたの持つ時間とエネルギーのほぼ100%を、「生徒の成績を上げる」という一点に集中投下できるのです。
これは、大手塾が逆立ちしても真似のできない、計り知れない価値を持つアドバンテージなのです。
第3章:「一点集中」こそが個人塾最強の戦略
資本力、人員、知名度…。正面からまともに戦えば、個人塾が大手塾に勝つのは難しいかもしれません。しかし、戦い方を変えれば話は別です。個人塾が取るべき戦略はただ一つ。「指導の質と生徒への貢献度で、地域No.1になる」という一点突破です。
「余計な業務がない」という恵まれた環境を、戦略的に最大限活用してください。大手塾が組織維持のために使わざるを得ない時間を、あなたは生徒一人ひとりのために使う。その時間の差が、圧倒的な指導の質の差、そして生徒からの信頼の差となって現れます。
あなたの塾を、「この地域で最も生徒一人ひとりに親身に向き合ってくれる塾」「どんなことでも相談できる、第二の我が家のような塾」としてブランディングするのです。それは、大規模な広告宣伝では決して作ることのできない、本物のブランド価値となります。
おわりに:さあ、誇りを持ってその武器を振るおう
なんというか、個人塾サイコー!と私は叫びたい気分です
これは決して単なる精神論や負け惜しみではありません。個人塾は、大手塾の弱点を的確に突き、競争優位性を確立できる、極めて合理的で戦略的なビジネスモデルなのです。
どうか、ご自身の選択に誇りを持ってください。大手の動向に一喜一憂する必要などありません。あなたは、大きな組織では決して実現できない、温かく、そして質の高い教育を、その手で生み出すことができるのですから。
目の前の生徒たちの顔を思い浮かべてください。あなたの時間を、あなたの指導を、心から待っている生徒たちがそこにいます。その子たちの成績を上げ、笑顔で志望校の門をくぐらせること。その一点に、あなたの持つすべてのリソースを集中させてください。
その先には、必ずや地域で圧倒的に支持される「流行る塾」の未来が待っていると、私は確信しています。
さあ、明日からも、個人塾という最強の武器を、誇りを持って振るっていきましょう!
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