そのプライド、月謝になりますか? ~なぜ大手塾はやり続け、個人塾はやらないのか。『校門前チラシ配り』に隠された集客の本質~

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集客が思うようにいかない…。個人で塾を経営されている多くの塾長様が、常に抱える悩みではないでしょうか。
Web広告の研究、SNSでの発信、保護者会での紹介キャンペーン…。
もちろん、それらも大切な企業努力です。
しかし、もっと原始的で、もっと直接的で、そして何よりも費用をかけずに始められる「最強の集客法」が、あなたのすぐ足元に眠っているとしたら、どうしますか?

今回は、私が大手塾の教室長時代に徹底的に叩き込まれ、そしてその絶大な効果を今もなお確信している「校門前でのチラシ配り」という、極めてシンプルな広報活動について、その本質と実践の勘所を、私の経験を交えてお話ししたいと思います。

第1章:私が体験した「校門前」という名の最前線

早朝7時半。
校門の前には、眠たげな目をこすりながら登校してくる生徒たちの列。その横で、私は「おはようございます!」と声を張り上げながら、塾のチラシを一枚一枚、手渡していました。
これは、私が大手塾に在籍していた頃の、ほぼ毎日の光景です。

冬は手がかじかむほどの寒さの中、夏は汗だくになりながら。時には露骨に嫌な顔をされたり、目の前でチラシを丸めて捨てられたりすることもありました。
隣には決まってライバルである他の大手塾のスタッフが立ち、無言の火花を散らす。
お世辞にも、快適で楽しい仕事とは言えません。

では、なぜ大手塾は、そこまでして「校門前でのチラシ配り」をやり続けるのでしょうか。
答えは明白です。それが、極めて費用対効果の高い、合理的な広報戦略だからです。

  • ターゲットへの直接リーチ: これほど的確に、塾に通う可能性のある生徒本人に直接アプローチできる手段は他にありません。
  • 圧倒的なコスト効率: 必要なのはチラシの印刷代と、あなた自身の労力だけ。高額な広告費は一切かかりません。
  • 地域への刷り込み効果: 毎日同じ場所に立つことで、生徒や保護者、地域住民に「あそこには、あの塾がある」という認知を強制的に刷り込むことができます。

大手塾は、その有効性を熟知しているからこそ、どんなに非効率に見えても、地道なこの活動を決してやめないのです。

第2章:個人塾が校門に立てない、たった一つの理由

私がこの「校門前チラシ配り」を続けていて、一つ、非常に不思議に感じていたことがあります。それは、ライバルである大手塾のスタッフとは頻繁に鉢合わせするにもかかわらず、その地域にあるはずの個人塾の塾長先生の姿を、ほとんど見かけたことがない、という事実です。

集客に悩んでいる個人塾は少なくないはず。なのに、なぜこの最も手軽で効果的な一手を打たないのか? 長年考え、そして多くの個人塾の塾長様と話す中で、私はその理由がたった一つに集約されることに気づきました。

それは、「プライド」です。

「一国一城の主である私が、道端で頭を下げてチラシを配るなんて…」 「生徒や保護者から、みっともないと思われたらどうしよう…」 「『先生』と呼ばれる身分なのに、そんな営業活動はしたくない…」 「もし、受け取りを拒否されたら、心が折れてしまうかもしれない…」

こうした、言葉にならない内なる声が、あなたの足を校門から遠ざけているのではないでしょうか。その気持ち、痛いほどよく分かります。しかし、私はここで、あえて厳しく問いたいのです。

そのプライドは、一体誰のためのものですか? そのプライドは、あなたの教室を満席にしてくれますか? そのプライドは、月末の支払いの足しになりますか?

答えは、もちろん「ノー」です。生徒が集まらず、経営が立ち行かなくなり、廃業に追い込まれてしまったら、大切に守りたかったはずのプライドなど、跡形もなく消し飛んでしまいます。
そんな悲しい結末を迎えるくらいなら、ちっぽけな自尊心など、今すぐゴミ箱に捨ててしまうべきだと、私は本気で思っています。

第3章:「作業」を「戦略」に変える、個人塾ならではのチラシ配り術

「分かった。プライドは捨てる。でも、大手と同じことをしても勝てないだろう?」…その通りです。
だからこそ、個人塾には個人塾ならではの、大手には絶対に真似のできない「戦略的なチラシ配り」が求められます。

  • チラシを「あなた自身の顔」にする 大手塾のチラシは、どうしても無機質になりがちです。しかし、あなたは違う。チラシに、あなたの顔写真と教育への熱い想いを載せましょう。「〇〇中学校の君へ」と手書きのメッセージを添えるのも良いでしょう。その温かみは、必ず生徒の心に届きます。

  • 「挨拶」という最強の武器を装備する ただ無言でチラシを渡すだけの「作業」にしてはいけません。生徒一人ひとりの目を見て、「おはよう!」「今日も一日頑張ろうね!」と、とびきり元気な挨拶をプレゼントするのです。あなたのその明るい人柄こそが、どんな立派なパンフレットよりも雄弁な広告塔となります。

  • 「継続」によって「いつもの先生」になる 最初は不審がられるかもしれません。しかし、毎日、あるいは毎週同じ時間に同じ場所に立ち続けることで、あなたは地域の風景の一部になります。「ああ、またあの塾の先生が立っているな」と。その認知は、やがて親近感と信頼感へと変わっていきます。

  • タイミングを制する者が、集客を制す 闇雲に配るのではなく、戦略的にタイミングを計りましょう。定期テストの一週間前、部活動の大きな大会が終わった直後など、生徒たちが「塾に行こうかな」と意識しやすい瞬間を狙い撃ちするのです。

これらは、もはや単なる「チラシ配り」ではありません。塾長であるあなた自身の人柄と情熱を、地域に直接売り込むための、最高のプレゼンテーションの機会なのです。

おわりに:さあ、明日、校門に立とう

机の上で複雑なWebマーケティング理論と格闘したり、効果の分からないポスティングに費用をかけたりする前に、どうか一度、試してみてください。明日、いつもより少しだけ早く起きて、あなたの塾の近くにある中学校の校門に立ってみる、ということを。

最初は勇気がいるでしょう。恥ずかしいと感じるかもしれません。しかし、その一歩を踏み出すことができたなら、あなたは「プライド」よりも「生徒との出会い」を選んだ、真の教育者であり、したたかな経営者です。

生徒のために頭を下げ、汗を流せる塾長。生徒のために、自分の見栄や体面を捨てられる塾長。私は、そんな塾長こそが、これからの時代、生徒や保護者から支持されるのだと信じています。

あなたのその一歩が、あなたの教室の未来を、そして一人の生徒の未来を、大きく変えることになるかもしれません。その可能性を信じて、さあ、明日、戦いの最前線である「校門」に立ってみませんか? 私は、陰ながらあなたのその勇気を、心から応援しています。

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