アルバイト講師の志望動機、ここだけは外さない——「自分の成長」より先にあるもの

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【目次】
* なぜ「自分の成長のため」という志望動機では不十分なのか
* 学生気分とプロ意識を分ける「主語」の違い
* 「自分ごと」で止まる講師が現場で起こす、致命的な問題
* 本当の成長は「他者貢献」という結果の先にある
* 採用とは、同じ景色を目指せる仲間を探すこと

なぜ「自分の成長のため」という志望動機では不十分なのか

私は教室長として、個別指導塾のアルバイト講師を数えきれないほど採用してきました。
ありがたいことに応募は絶えず、採用現場では常に選ぶ側に立たせていただきました。

その面接の場で、私が一貫して見抜こうとしてきたのは、履歴書の志望動機に宿る“主語”です。

結論から言えば、「自分の成長のためです」という言葉が中心に据えられた志望動機は、ほぼ見送ってきました。
逆に、「生徒の成績を上げたい」「教室に貢献したい」といった、自分以外の誰かを主語にできる人とは、ぜひ一緒に働きたいと考えてきました。

なぜ、そこまで主語の置き方にこだわるのか。

理由は極めて明快で、我々が提供する塾という仕事の価値は、生徒の成績向上や学習習慣の改善という、具体的な「結果」としてしか社会に還元されないからです。

この一点に尽きます。

学生気分とプロ意識を分ける「主語」の違い

高校生までの世界では、「頑張ります」という宣言そのものに価値がありました。
親や先生は、その意欲を評価し、応援してくれたはずです。

しかし、大学の門をくぐり、社会へ出る準備を始める段階で、その評価軸は根底から覆ります。
社会が我々に問うのは、「あなたの頑張りは、組織にどんな利益をもたらすのか?」という一点です。

塾で言えば、その利益とは生徒の点数アップであり、志望校合格の実績であり、それによって得られる保護者の安心と、教室運営の安定に他なりません。

この構造に、意識が自然と向いているかどうか。
私は、志望動機の段階で、その人物の視点が“自分”という狭い世界に留まっているのか、それとも“生徒・保護者・教室”という、より広い世界に移っているのかを厳しく見ています。

もちろん、「人に教えるのが得意だと言われてきました」といった自己評価を、頭ごなしに否定するつもりはありません。
重要なのは、その一歩先に何を見ているかです。

例えば、その経験を語るにしても、
「だからこそ、担当する中学生の英語は定期テストから逆算して学習計画を分解し、短時間の家庭学習と小テストを徹底することで、三か月以内に平均点を必ず引き上げたい」
というように、結果のイメージが他者の具体的な変化として語られているか。

そのための方法論が、分量や頻度、確認の仕方まで具体化されているか。
そうした視点を持つ人の言葉からは、ありありと教室の風景が浮かび上がってくるのです。

「自分ごと」で止まる講師が現場で起こす、致命的な問題

反対に、主語が自分に固定化されたままだと、現場では“優先順位の致命的な履き違え”が起こりやすい。
これも、私が嫌というほど見てきた現実です。

例えば、生徒のテスト対策で最も多忙な土曜日に、「サークルの大事な用事がありまして」と、悪びれもなくシフト協力の相談をしてくる。

本人に悪気はないのでしょう。
しかし、教室全体の都合や、他の生徒が学習機会を失う可能性にまで、想像力が及んでいないのです。

志望動機の段階で「自分の成長」を繰り返していた人が、配属後も同じ視点から抜け出せず、組織の中で迷子になってしまう。
こうしたケースは、決して珍しくありません。

個別指導という仕事は、手を抜こうと思えばいくらでも“楽”ができてしまう側面があります。
だからこそ、最初の入り口で「他者貢献」という言葉を、綺麗事ではなく本心から語れる人と、私は一緒に働きたいのです。

本当の成長は「他者貢献」という結果の先にある

生徒の点数が上がった時の、あの弾けるような笑顔。
保護者の方が受話器の向こうで見せる、安堵の声。
そして、合格発表の日に届く、感謝のメッセージ。

これらは、講師自身の自己満足や「成長したい」という願望だけでは、決して辿り着けない場所にある景色です。
志望動機の数行の文章から、その景色を見たいと渇望しているかどうか。私はそこを読み取ろうと、全神経を集中させてきました。

誤解してほしくないのですが、「自分の成長」を否定したいわけでは全くありません。
むしろ、人は誰かのために方法を磨き、知恵を絞り、そして結果を出す過程でこそ、最も大きく成長する生き物です。

これは順序の問題なのです。

まず、生徒という他者の変化を主語に据える。
そのために、自分は何をすべきかを徹底的に考え抜く。

そうして初めて、教育という仕事が血の通ったものになり、結果として自分自身が成長させられるのです。

採用とは、同じ景色を目指せる仲間を探すこと

採用とは、短い時間で未来の戦友を選ぶ営みです。
履歴書に書かれた数行の言葉は、単なる文章以上の重みを持ちます。

個別指導塾のアルバイト講師という入り口であっても、その主語の置き方ひとつで、見える景色は全く変わってくる。
私はこれからも、他者の変化を自分の喜びとして心から受け止められる人と、共に仕事をしたいと強く願っています。

生徒の成績が上がる。

その確かな実感が、教室を前進させ、講師自身の成長を結果として力強く押し上げるからです。

最後にもう一度、志望動機の核心を伝えます。

個別指導塾の仕事は、生徒の変化という具体的な結果を通じて、社会に価値を返す営みです。
だから私は、「自分の成長のため」という言葉より先に、「生徒の成績を上げるために、自分は何をどうするのか」と、自分の言葉で語れる人を選びたい。

これは単なる採用の技術ではなく、教育に携わる者としての私の矜持に他なりません。

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